Scientific American (翻訳記事は、日経サイエンスが扱っている)のオンライン記事に、”Is Old Age Memory Decline reversible?” (老化による低下した記憶力は蘇るのか?)というものがありました。
昔から、一度成熟した脳神経は、減っていく一方で新たな神経は作られないと一般常識で言われていましたし、立花隆著の “東大講義 人間の現在1-脳を鍛える- ” の中で、” … よく知られているように、ヒトは生まれながらにし、ひとそろいの脳の神経細胞(ニューロン)を全部持っていて、それは死ぬまで、減ることはあっても増えることはないと言われています….“と述べられています。しかし、実際は神経細胞は生後から死ぬまで増え続けるということが、最近の研究からわかってきています。その元になる、神経幹細胞(神経などの脳細胞へ分化する前の細胞)は、実験室レベルでは我々も含め多くの研究室で使用されていますし、アルツハイマーやパーキンソン病の遺伝子治療への応用も研究が進んできています。運動することで、海馬の神経細胞が増加することも知られています(だから、みなさん適度な運動はしたほうがよいですよ)。
少し脱線してきましたが、話を戻しますと、その海馬の短期記憶に関係する神経幹細胞を細胞工学によって大人のマウスから増殖に関わる遺伝子(TLX)を除き神経細胞が新たにできなくしたところ、記憶力の低下がおきたことをアメリカのグループが実験的に証明したネイチャー誌の記事(1月30日オンライン速報版)を紹介しています。
つまり、記憶力の低下は神経幹細胞の増殖低下による影響も考えられるわけですね。記憶力は、神経細胞の数と神経間のネットワークの数(複雑さ)に依存する従来の説から、神経幹細胞増殖も記憶力に関わっているということがわかってきたということは、この幹細胞の減少を抑えるクスリを将来開発でき、それによって記憶力低下を予防することができる世の中がくるかもしれません。
Scientific American http://www.sciam.com/article.cfm?id=is-old-age-memory-decline-reversible